トン・ツー(モールス符号)による狭帯域通信

 私の趣味「アマチュア無線」で、もっとも基本的な変調である、送信搬送波(キャリア)を断続して通信を行うトン・ツーのモールス符号を用いた電信の交信が好きです。これは、狼煙(のろし)による通信にも似ています。マイクに向かって音声で通信をしているときに、急に電波の伝播状態が悪くなり、相手の声が聞きづらくなってきたら、音声をモールス符号に切り替えると、闇夜の中にポッと灯りがついたように相手と通信を続けることができます。


 1976年に生まれて初めて訪れた海外のアマチュア無線クラブは、Sigi(DK9FN)、Bernhard(DF5FJ)、Holger(DF2FQ)に連れられて訪れた当時の西ドイツのゼリゲンシュタットのアマチュア無線クラブ局 (DK0RA) でした。クラブハウスで Hans(DJ3QT)からの歓迎の言葉は、そこにあった送信機に接続された電鍵(キー)で打たれたモールス符号による「Willkommen auf unsere Clubstation von F38. (Welcome to our F38 club station.)」でした。


 モールス符号による通信を普段、行うときは、ロジックICを組み合わせて自作した「短点:長点」が「1:3」に正確に出せるエレキーを用いていますが、たまに「米つきバッタ」と呼ばれる人が短点と長点を打つ「縦ぶれ電鍵(Straight Key)」・・・電源不要・・・を用います。左の写真の電鍵は、DXペディションで著名な Dr. Karl-Heinz Ilg (DK2WV)さんからプレゼントされたものです(Vielen Dank !)。この電鍵は、エスカルゴ事務局より「2011-SC.OS」の認定KEYコードをいただきました。トンとツーしかないモールス符号ですが、不思議なことに、これでも感情が伝わるのです。本当ですよ!


 かつては第3級アマチュア無線技士以上の資格を得るための試験科目としてモールス符号の実技試験がありました。私も国家試験を受験したときには、モールス符号の実技試験(欧文と和文)はかなり難しいと感じました。送信実技試験では、試験官が紙テープに印字される私の送信符号を見ているのですが、送信している私は、まさに手に汗にぎる緊張状態でした。


 私はモールス符号を用いた電信の交信を愛好するクラブのメンバーになっています。JARL A1 Club (#1682)、Straight Key Century Club (SKCC #3086)、そして、アマチュア無線暦25年以上の人がメンバーになれる Quarter Century Wireless Association (QCWA #28339)のメンバーとして、アクティブに電信で交信しています。


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トレンドは SDR トランシーバー

 私は仕事で無線機の設計をしてきましたが、DSPの処理能力が年々、向上していた1990年代に、奨励的には無線機のハードウェア(電子回路)は、デジタル信号処理(DSP:Digital Signal Processing)によるソフトウェアに置き換わるだろうと感じていました。そこで、1996年に「DSPの無線応用(オーム社)」という本を書きました。

 この本を書いてから15年後の2021年に、DSPを用いた SDR(Software Defined Radio)トランシーバーを自作しました。SDR 技術を用いる際のソフトウェアの開発には、無線を理解し、かつ、無線機の回路構成(ブロックダイアグラム)がわからないと、高性能な無線機の設計はできません。現在、ハードウェア設計ができる無線技術者が激減しています。私も大学で無線工学の講義を担当していますが、今の日本には、無線技術者の育成が大切と思っています。無線機の回路技術はほぼ完成領域にあり、この20年間の無線通信の変化を見ても、無線機の構成は変わっていないことがわかります。

 一方で、ハードウェアでしか作れないものに、送信用ハイパワーアンプがあります。私は1992年に、周波数、パワー別に過去の CQ出版社発行の各誌から選んだ記事や、新規に執筆した内容を中心に再編集した「リニアアンプスタイルブック(CQ出版社)」を出版しました。


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